月曜日, 10月 08, 2007

「年収100万円台の非正社員」を放置していいのか

先日の東京新聞で「深刻な所得格差」という特集をしていた。
『所得格差を判断するため、まず厚生労働省の所得再分配調査の当初所得(公的年金など社会保障給付を除いた所得)に着目してみました。』
『調査が始まった一九六二年以降、最高所得グループと最低所得グループの所得に占める割合の格差(倍率)を計算すると、六〇年代から七〇年代後半までは十倍以内でした。高度経済成長期などで、まさに一億総中流時代です。しかし、八〇年代から十倍を超え、九〇年代は二十~三十倍程度に広がりました。さらに九九年に六十一倍に達し、二〇〇二年には百六十八倍と百倍を超えました。〇五年は端数処理の関係で最低所得層の割合がゼロになったため、計算上無限大(端数処理前でも四千倍超)にまで急激に広がりました。格差の急激な拡大時期は、構造改革、市場主義経済を掲げた〇一年の小泉政権発足以降と符合します。また、〇二年と○五年の調査を比べると、所得の多いグループの割合が一段と高まり、中間以下のグループは割合がさらに低くなるなど富の偏在に拍車がかかっています。』

「年収100万円台の非正社員」を放置していいのか / SAFETY JAPAN [森永 卓氏]
『景気拡大が続いている。拡大のペースは非常に緩やかではあるが、その間に雇用関係の指標も大きく改善した。
 2002年1月に0.5倍と最低を記録した有効求人倍率は、2007年7月には1.05倍に上昇。有効求人倍率が1倍を超えるということは、数字の上では、すべての求職者に求人が行き渡っていることを示している。
 直近で有効求人倍率が1倍を超えていたのは、バブル期の1988年から1992年までのことだから、現在の求人の盛り上がりは、数字を見る限りバブル期並みということになる。
 こうした状況を指して、構造改革路線は正しかったという学者が少なくない。「改革が成功したからこそ雇用情勢が改善した」と彼らは主張する。だが、それは本当だろうか。
 有効求人倍率が改善したからといって、素直に喜べないのにはわけがある。通常の有効求人倍率には、パートタイマーの求人が含まれているからだ。』
『厚生労働省が発表した2006年の「賃金構造基本統計調査」によると、正社員の平均年収が523万円であるのに対して、正社員以外の平均年収はちょうど半分の267万円に過ぎない。これだけでも、置き換えによってかなりの節約になることが分かる。
 だが、この267万円という数字も曲者である。厚生労働省の別の統計である「就業形態の多様化に関する実態調査」に中央値を与えて年収を推計すると、120万円程度しかないことが分かるのだ。
 これはどういうことかというと、非正社員の統計には、特殊技能を持った派遣社員や定年を過ぎた嘱託社員のような一部の高給取りも含まれていて、彼らが平均値を押し上げているのである。それを除いた一般のパートやアルバイトは、100万円ちょっとの年収で暮らしている人が大半なのだ。』
『年収100万円台の人たちの大半は年金を払っていない。このまま放置して、年金制度が崩壊したらどうなるか。彼らの生活保証はすべて生活保護が受け持つことになり、莫大な税金が必要となってしまう。・・・非正社員は、年金の将来がどうのこうのと考えて未納になっているのではない。単に金がないから年金を納められないだけなのだ。』
『・・・ つまり、正社員とほぼ同じ仕事をしている非正社員は、福利厚生や社会保険などを含めて、正社員と同じ待遇を得られるようにすべきだという考えである。それが実現できれば、労働者は自分のライフスタイルを守るために非正社員となることが選択でき、一方で企業にとっても雇用の柔軟性を得ることができるだろう。
 そんなうまい話があるかと言われそうだが、オランダでは四半世紀以上前から、正社員と非正社員の差別を禁じている。この制度の導入後、オランダでは急速にパートタイマーが増えたという。他のヨーロッパ各国でも似たような制度を導入しているが、それによって国際競争力を失ったという話は聞かない。』
『本当に痛みのある構造改革をする気があるのなら、正社員の給料を下げて、非正社員の給料を上げるという「再分配」が必要だとわたしは考える。正社員にとっては不満だろうが、何十年か先に生活保護世帯が激増して、税金からの持ち出しが増えればもっと事態は悪くなる。生活保護などせずに放っておけという暴論もあるだろうが、それでは社会不安を生むだけだ。』

ビル・トッテン氏のコラムにもあったように、経済全体が成長しているのに働く人にはその分け前が届いていない。企業の得た利益は株主や企業の役員にほとんど独り占めされている状況が東京新聞の記事でもよく分かる。このままの状態を放置しておくと社会状況はますます不安定化し、犯罪も多くなるに違いない。今でも、外国人研修制度の企業による悪用によって、新しい形の犯罪が増えているではないか。
日本の指導者層はいったい何を考えているのだろうか?

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

昔大学でならった労働法では「同一労働同一賃金」(年齢・性別・国別によって労働賃金に差が出てはならない、ただし家族手当や習熟度による差はある)、ようするに雇用形態によって賃金に差が出てはならない、雇用形態によって差をもうければ経営者は安い労働力を買うものであるということです、ですから労働者は雇用形態の違うものを含めて労働環境の改善をすべきである。
約40年前の労働法です、今の状況はどうでしょう組織に守られている労働者は非正規労働者の痛みを分かっているでしょうか?非正規労働者自身の問題もなかにはあるかとも思いますが、この方たちは現在の賃金だけでなく、将来の年金(何らかの事故により障害者になった場合、年金保険料を支払ってないと障害年金の受給要件もない)も恐らく基礎年金しかなく少ない、また健康保険料を滞納していれば、国民皆保険の保障もない。
もう自分さえよければよいという考えを改善しないと若者の将来が心配です。

ichi さんのコメント...

「もう自分さえよければよいという考えを改善しないと若者の将来が心配です。」
いや、全くそのとおりです。
今のままでは、将来に大きな禍根を残すこと必定です。
もっと、思いやりのある政治を行って欲しいものです。

SHISHAMOとジャズのリズム

SHISHAMOの武道館でのライブを記録した,ブルーレイディスクを聞いている。SHISHAMOの曲の詞はメロディーに乗せるのがジャズのリズムになっている気がしてしょうがない。そう,これらの詞はジャズのインプロビゼーションそのものだ。