養老孟司さんが新聞のコラムに書いていた。「世間の崩壊と教育」について、「他人のせいにするな」という趣旨のものである。
「親というものは、ひっくり返せば子どもと同じで、どうしようもないものである。つまりおたがいに仕方がないものなのだが、現代人は都会人だから「仕方がない」をいえない。銀座で石につまずいたら「だれがこんなところに石を置きやがったんだ」と、訴訟問題にする。それが都会人である。でも山の中で石にけつまずいたら「足元をよく見て歩け」といわれるだけである。そういう都会人のつくる世間のなかから、親を殺してくれと頼む子どもが生まれてくるのはむしろ当然であろう。やむをえないことを認めることから、人間の成熟が始まるなんて、夢にも思っていない。親孝行なんて封建的だ。そういってきた人は、こうした高校生の発生に責任をとる気があるか。」
・・・・・
そう書いたあとで、大人が反省するように説いている。子供の小さい頃を思い出してみれば、なるほど親の他に頼れる人などいなかったのだ。そうした頃に、親がしっかりとした生活態度を見せ、社会生活上のルールの基本を話して聞かせていれば・・・とも思う。
日本にはかつては、神道があり仏教があった。倫理や道徳を学校で教えたところで、生活の中にしみこんだ宗教の生活上の智慧にはとても及ばないようだ。無宗教になった日本人は、理性的に社会生活上の倫理や公衆道徳を身につけなければならなくなったのに、まず、大人がそれを身につけていないところに根の深さがあるのだろう。
月曜日, 9月 25, 2006
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